復讐するは我にあり

著者:佐木 隆三 発行者:文藝春秋

昭和38年、5人を殺して日本全土を逃げ回る凶悪犯罪が起こった。
前科四犯の当時37歳の西口彰を全国指名手配、約12万人も警察官
を動員して、逃亡する西口を追った。小説では、西口彰を榎津巌
として書かれている。

榎津は、カトリック教徒の家で生まれ、5歳で洗礼を受けている。
キリシタンの厳しい戒律に反抗して、非行に走るようになった
とも受け取れる。
「愛する者よ、自ら復讐するな、ただ神の怒に任せまつれ。録して
『主いい給う。復讐するは我にあり、我これを報いん』とあり」
新約聖書の一節から引用されている。
悪人に報復を与えるのは神だけである。我々は決して復讐を行ってはいけない。
という意味である。
10月18日専売公社職員、運送会社員を殺害。
翌日には、平和台球場で野球見物。
10月24日岡山県で靴を買い、宇高連絡船で偽装自殺。
10月26日京大教授と偽り静岡県出没。
11月5日~7日広島県で詐欺。
11月18日静岡県で母娘を殺害、衣類、電話加入権など入質
12月3日千葉市で2件の詐欺。
12月5日福島県で弁護士バッジを搾取。
12月6日~7日 北海道で詐欺。
12月20日東京で弁護士を殺害。
昭和39年1月3日熊本県で逮捕。
昭和45年12月11日絞首刑。
作者は、淡々と丁寧に、この凶悪犯罪者の逃亡・逮捕・裁判を克明に描き綴った。
☆☆☆☆☆
第74回直木賞受賞

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