著者：小杉 健治 発行所：光文社
骨の記憶の解説に、集団就職を扱った小説に本書が挙げられて
いたので読んでみました。
大変めずらしい相撲を題材にしたミステリーでもありました。
秋田県から集団就職で東京の工場へ行く予定の大輔、車の整備士を
目指す親友の武男。二人から好意を寄せられる由子。
進路が半ば決まった中学三年の秋、村の祭の相撲大会で、大人相手
に優勝した大輔。
旭川部屋へ入門が急遽決まった大輔、大輔の行く予定の工場に変更される
武男。大輔へ思いを寄せる由子の生き様に、中学校長の殺害事件や
消息不明の元力士の父親の存在、また退職して癌に侵されながら
現役時代の未解決事件に執念を燃やす村尾など、様々な人々が交錯して
物語は進行してゆく。☆☆☆☆☆
第11回吉川英治文学新人賞受賞
昭和39年の東京オリンピックを挟んでの高度経済成長
を背景に、中学卒業で集団就職する若者。
また、成長を底辺で支える山谷の労働者たちの実態などを
織り交ぜた社会派小説でもある。