わたしが出会った殺人者たち

著者:佐木 隆三 発行所:新潮社

「殺人者と他の人間との違いは程度の差であって、
     種類が異なるのではない。」

著者が、この言葉を引用して「まったく同感」と記しています。
イギリスのコリン・ウィルソンの言葉である。
昼間は、大英博物館で執筆、夜は野宿という生活の中で、
殺人・オカルト・心理学を独自思想で掘り下げ実在主義を唱えた
博覧強記な小説家である。

「復讐するは我にあり」の西口彰。
千葉大女医殺人事件で、妻を殺し、その後拘置所で
自殺した藤田正。
時効成立の20日程まえに逮捕された福田和子。
4人もの幼い女児を殺害した宮崎勤。
和歌山毒カレー事件の林真須美。つい先日、林真須美の長女が
子供を道連れに飛び降り自殺しました。
下関駅通り魔殺人事件の上部康明。
オウム真理教の麻原彰晃。
今でも記憶鮮明なのが、池田小大量殺人の宅間守。
8人を殺害、15人を殺人未遂という前代未聞の大事件である。
これら18人の殺人者の事件の詳細、生い立ちを掘り下げ
事実をひとつひとつ積み重ねた小説である。
18人の中で特に取り上げたいのが、永山則夫である。
横須賀のアメリカ海軍基地内で、22口径小型ピストルを盗み
4人を殺害、また他にも強盗殺人未遂も起こした19歳。
昭和24年北海道網走にて8人兄弟姉妹の7子(四男)として
生まれた則夫。父親は蒸発、行商をしていた母親も実家のある
青森には全員連れて帰れずに、4人の子は置き去りにされ、
くず拾いやゴミ箱をあさる生活が続く。
福祉事務所の通報により青森に連れられたが、兄たちからの暴行
などまともな教育も受けられず、19歳での犯行となる。
獄中で記したノートから「無知の涙」を出版、ベストセラーとなる。
その後、木橋を執筆、第19回新日本文学賞を受賞。印税を被害者遺族に
届ける。48歳で死刑執行。☆☆☆☆

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