慈雨の音

流転の海 第六部
著者:宮本 輝 発行所:新潮社

皇太子ご成婚、初のパレード、日米安保条約、東京オリンピック
のニュースに沸き返っていた昭和34.5年の高度経済成長を背景に
した熊吾一家の大阪下町の生活が描かれています。
城崎で小料理屋「ちよ熊」を繁盛させ、90代のムメばあちゃん、
また熊吾が押し付けた麻衣子、また六歳の正澄と暮らす大黒柱
浦辺ヨネの葬儀から話は始まる。
ヨネは、自分の遺骨を余部鉄橋から撒いてくれと遺言に綴る。
高さ41mの余部鉄橋。明治45年に建設された
鋼トレッスル橋梁で、当時東洋一と言われた。
熊吾、房江、伸仁と麻衣子は、足もすくむ余部鉄橋から粉々にした
ヨネの遺灰を撒く。
中学生になった伸仁は、飼い犬の生んだ目の開かない子犬を、毎日
毎日、ホウ酸でひたした脱脂綿で拭き続ける。
また、伝書鳩を飼い、最後には余部鉄橋で解き放つ。
房江は、家事の合間にペン習字の通信講座を受ける。
地道に小さい商いからとの房江の説得にめずらしく耳をかたむけた
熊吾。ハゴロモという中古車販売店をモータープールの管理人をしながら
始めるのであった。☆☆☆☆☆

この第六部で、海老原太一が自殺するというハプニングがありますが、
読者としては、太一をもう少し生かして、熊吾とからませて欲しかった
のが残念です。

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